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平成17年度青年部視察研修報告

株式会社 ふらの衛生社 高橋穣二

はじめに

昨今、生ごみ等の循環的利用が重要な課題となってきており、国も生ごみ等の3R・処理に関する検討会を立ち上げ、本格的に取り組む姿勢を示しています。この時に当り、生ごみの堆肥化事業を進めている宮崎県の施設を研修先とし、併せて、浄化槽に係る諸問題等について研さんを深めるため、宮崎県環境保全協会の長友事務局長〈(社)全浄連 事業・組織広報委員〉に講演をお願いした。

視察日程:平成18年2月23日(木)〜25日(土)、参加者:9名

1.視察先

1.綾町液肥処理センター(地域資源循環活用施設)

  1. 綾町の概要

  2. 宮崎県のほぼ中央、宮崎市から西へ約20kmに位置する。人口は約7,500人。
  3. 施設概要

  4. フローシート
原料(し尿・浄化槽汚泥) 固液分離(パックセパレーター) 調整槽(酵素添加)
濃縮(ファイバースクリーン) 脱水→脱離液→成熟槽→貯留槽→農地散布(無料)

固形物→堆肥センターへ

1日の投入量:15.5kl/日

処理期間(1工程):40日

綾町液肥処理センター(地域資源循環活用施設)
綾町液肥処理センター(地域資源循環活用施設)
綾町液肥処理センター(地域資源循環活用施設)

2.綾堆肥センター(堆肥生産処理施設)

 有機質肥料の供給を目的として昭和63年から畜糞と生ごみの混合で堆肥化を実施してきたが、開放型であったため臭気で近隣に迷惑をかけていた。平成8・9年度畜産環境整備特別対策事業で再整備し、密閉式コンポストやロックウール脱臭槽等を設置した。平成14年耕畜連携・資源循環総合対策事業により、ペレットマシーン、高速堆肥散布車導入。

綾堆肥センター(堆肥生産処理施設)
綾堆肥センター(堆肥生産処理施設)
綾堆肥センター(堆肥生産処理施設)

 生ごみ収集は、トラックで木曜日と日曜日を除く毎日で、朝と昼の2回、町内の約60%の家庭を回り、残りの40%は家庭用コンポストで処理をしている。1日3トンの生ごみは、100%土に還元されている。

3.みやざきバイオマスリサイクル(株)

(鶏ふん焼却に伴う灰の販売(肥料)、焼却熱を利用した電力の販売)

みやざきバイオマスリサイクル(株)工場パース
鶏糞ボイラー施設表示
みやざきバイオマスリサイクル(株)工場視察風景
みやざきバイオマスリサイクル(株)工場
みやざきバイオマスリサイクル(株)工場

1.事業概要

経 緯
これまで、養鶏業者で発生する鶏糞は、発酵堆肥化処理などが行われる一方、田畑へ施肥還元されるものもあり、地域によっては悪臭等の環境問題が発生していた。また、平成11年11月の「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の施行により平成16年11月から畜産農家に対して抜本的な対策の実施が義務付けられた。この状況への対策実施を目指して、養鶏農家、ブロイラー業界企業、西日本環境エネルギー(株)の共同出資により、平成15年5月「みやざきバイオマスリサイクル(株)」を設立した。設備の建設に当たっては自己資金の他に、国と県からの補助金の交付を受けている。
事業目的
鶏糞焼却に伴う灰の販売、焼却熱を利用した電力の販売
営業開始
平成17年5月27日
敷地面積
9,600平方メートル
延床面積
3,500平方メートル
出資構成
農家401戸(1農協,2農事組合法人)55%、ブロイラー会社(3社)3%、西日本環境エネルギー(株)42%
総事業費
48億5000万円(助成金13億円)
原料受入
1100円/トンで買取
焼却量
13万2000トン/年、日最大440トン (国内最大規模)
発電出力
11,350kw(一般家庭3,000戸分)(内9000kw九州電力へ販売)
330日/年 稼動
灰の販売
出資企業のブロイラー業者系列肥料加工会社へ(売電と合わせて11億円/年)

2.処理フロー

みやざき宮崎鶏ふん焼却施設のしくみ

みやざき宮崎鶏ふん焼却施設のしくみ

 養鶏農家から鶏糞の買取→トラックにて搬入→密閉式サイロ2基に貯蔵→1,200℃炉内焼却(臭気の熱分解)→発生蒸気でタービンを回し発電(売電及び場内利用)、焼却灰は肥料会社へ

鶏ふん貯蔵サイロ
サイロ内の臭気の外部漏出を防止するため、ボイラー用の燃焼空気をサイロ内から吸引。
ボイラー
鶏ふんは水分が30〜50%であり、ナトリウムやカリウム等の低融点成分を多く含むなど、安定燃焼させることが難しいため、英国で実績のあるストーカー炉を採用。
発電
鶏ふん発電プラント3基を10年以上にわたって運用しているファイブロワット社の技術を一部導入。

2.宮崎県環境保全協会青年部との研修・交流会

宮崎県側参加者:18名

講師:

宮崎県環境保全協会青年部 長友事務局長

役職 宮崎県環境保全協会 事務局長

   宮崎県環境保全事業連合会 事務局長

   (社)宮崎県浄化槽協会 理事

   (社)全国浄化槽団体連合会 事業・組織広報委員

   他

○浄化槽に係る諸問題について

1.維持管理の徹底

宮崎県では、維持管理・法定検査受検の徹底を図るため、県・宮崎市・浄化槽協会・検査機関を構成員として「浄化槽管理推進適正管理推進会議」を設置している。また、県条例で「浄化槽設置者講習会」の受講を義務化している。

2.浄化槽法の一部改正について

3.環境省中央環境審議会・浄化槽専門委員会の検討事項

「浄化槽の維持管理に係る業務の在り方について」検討中

○その他

1.「合特法」と代替業務について

裁判判決例
合理化事業計画の策定がないと損失補償的法律上の義務は発生しない。
対   策
市町村が財務(契約)規則で規定すれば随意契約は可能である。

2. 新規許可対策について

  • 不許可処分を適法とした最高裁判決 等
  • 日環協 委託許可問題特別対策委員会にて「委託許可対策・随契対応マニュアル」の作成を検討中。

3.災害時における一般廃棄物の収集運搬等に関する協定

宮崎県と宮崎県環境保全事業連合会は、災害時におけるし尿及び浄化槽汚泥その他災害に伴って発生する一般廃棄物(災害一般廃棄物)の収集運搬に関しての協定を結んでいる。県側が連合会に支援を要請する為のものであり、原則無償協力となっている。

宮崎県環境保全協会青年部との研修・交流会

宮崎県環境保全協会青年部との研修・交流会

3・おわりに

1.綾堆肥センター

綾町では、ごみ処理の一つとして堆肥化を行っている視点とは異なる経緯がある。それは、住民一人当たりの医療費負担が高くなり、これを機に日常の食事の見直しが図られ有機農産物に注目し、「一坪菜園」運動が始まり、し尿・生ごみの農地還元が行われるようになったとの事である。

2.宮崎バイオマスリサイクル

宮崎では、養鶏の他にも、全国2位の養豚、全国3位の肉用牛の生産が行われているがそれらの畜産排泄物は鶏よりも水分が高いため活性汚泥処理が主流である。

3.宮崎県環境保全協会青年部との研修

代替業務や新規許可対策などの判例など、現在抱えている問題であるため非常に参考になりました。

 

今回の研修は2泊3日で、なか1日の研修ということで大変あわただしい日程でしたが、非常に意義深いものでありました。

今回の視察研修にあたり、宮崎県の長友事務局長さんには、準備の段階から当日の行程全般にわたり大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。